2020年12月に「はやぶさ2」が地球に持ち帰った、通称「タマテバコ」の中身は
現在もJAXA内の「初期分析チーム」と外部機関の「フェーズ2キュレーション」
併せて8チームによって分析が続けられています。
タマテバコとは、はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った粒子が入ったカプセルのことで、
科学的に非常に貴重なサンプルが含まれていることを期待されて名付けられました。
リュウグウは有機物や水を含むとみられるC型(炭素の元素記号から)の小惑星です。
初代「はやぶさ」が微粒子を持ち帰ったS型(岩石質を表すStonyから)の小惑星イトカワと異なり、
サンプルを調べれば地球の水や、生命を構成する有機物との関係を明らかにできると考えられています。
▼リュウグウの大きさ
9月23日、初期分析チームのうち、東北大学の中村智樹さんを中心とする
「石の物質分析チーム」の分析結果が新たに公表されました。
石の物質分析チームでは、直径1~8mmのリュウグウ粒子17個について、
放射光を用いたX線CT画像の撮影や、電子顕微鏡による鉱物の分析、
二次イオン質量分析計などを使った化学分析を行いました。
その結果、サンプルに含まれていた硫化鉄の結晶に空いた直径数μmの穴に
液体の水が閉じ込められているのを発見しました。
これまで地球外で水が確認されてきたことは幾度もありましたが、
顕微鏡で観察できるスケールかつ、液体の水が見つかったのは世界初の出来事です。
質量分析計で調べたところ、液体には二酸化炭素や塩化物、有機物が溶け込んでいて、
しょっぱい炭酸水のような組成ということがわかりました。
リュウグウの元になった小惑星(推定ではポラーナ、またはエウラリア族に属していた)に
豊富な水があった証拠で、地球の水が太古に衝突した小天体からもたらされたとする説を補強できる成果だとのことです。
私達の住む地球にはまだまだ謎が多く世界中の研究者が日々さまざまなところからヒントを得て研究に励んでいます。
今回は遙か宇宙の小惑星の、たった一滴の水によって地球の成り立ちのヒントを得ることができました。
コバセイでもリュウグウ粒子を調査する検査装置のひとつを設計、製作しました。
▼コバセイで設計した検査装置
どのチームがどのような分析に使用したかはお伝えすることができませんが、
小さな発見が人類の知識を深くする、その力のひとつになれたことを誇らしく思います。
コバセイでも航空機部品を加工してきた知識、工場を運営してきた経験を活かし、
人類としての使命を全うすべく、今後も仕事ひとつひとつに真摯に取り組んでまいります。